spiceでオペアンプを考える

 以前CQ出版から出ていた「電子回路シミュレータPspice入門編」に付属のPSpiceを使用しておりました。 これはこれで結構使いやすいのですが、部品点数に制限があったりします。まあ、基礎的な確認なら問題はないのですが。 ちょっと仕事でオペアンプの電源周り設計がありまして、リニアテクノロジーのオペアンプを使おうと思い、 spiceデータを探していたら、LTspiceなる、スパイスそのもの(?)を出しておられることを今更ながらに発見し、 早速、インストールしてみました。

このページ情報はspiceによるシミュレーション結果です。 実際に製作したハードではありません。


オペアンプできれいな波形を出すには

 今行っている作業はDAコンバータから出力された電圧(バイポーラ)を、 倍率1倍で増幅して出力端子から出すというものです。 「ボルテージフォロア」の簡単なオペアンプ回路で実現できます。 ボルテージフォロアに関しては、先人各位のページをご覧ください。
 それで、思ったのですが、オペアンプに何を採用すれば、応答性が良く、ノイズも載りにくいのでしょう? また電源には、DCDCコンバータを使う予定なのですが、このDCDCコンバータの資料によれば、 電源リップルノイズは最大150mV(P-P)とあります。この電源ノイズは出力にどのような影響を与えるのでしょう?
 ミリボルトやマイクロボルトの話になれば、バラックやブレッドボードで実験することは、 現実的ではないように思います。工作精度、実装精度が悪く、実験に再現性が求められないからです。 こんなときこそシミュレータの出番です。「理論的」にベターな回路を示してくれます。 しかも高電圧が素子にかかっても、「バーニング」しません。

LT1128を±15Vでドライブする

 LT1128(リニアテクノロジー)というオペアンプがあります。1000円近くします。 仕事でなければ絶対チョイスしないオペアンプですね。 これに加える±15Vの電源に、ノイズが載った場合、どうなるかをシミューレションしてみます。
LTspiceシミュレーション結果1
(回路がみにくいですのでクリックして拡大してください。)

電源±15Vにホワイトノイズ150mV(P-P)を載せています。 今回は、ノイズレベルを見たいだけなので、入力は0Vにしてあります。 少し考えればわかるのですが、両電源のオペアンプは、 (そもそも両電源・単電源という表現は良くないように思う) グランドの電位を知りません。電源の真ん中あたりを意識(?)しているダケです。 そこに、±独立でノイズが載った電源を加えると、図のように、出力にノイズが載ります。 想像していたよりノイズは少なく、700μV(P-P)程度です。割とオフセットはないように見えます。
 で、ここからが、アナログ回路の恐ろしいところというか、楽しいところでもあるのですが、 もう少しノイズを抑えるために、試行錯誤しまして、どこかの本で読んだ、 電源にローパスフィルタを入れるというのをやって見ました。 もともと、パスコンは入っていますから、パスコンと電源の間に抵抗を入れるだけです。
LTspiceシミュレーション結果1
(回路がみにくいですのでクリックして拡大してください。)

 「マジで!?」というくらい結果が違います。ノイズは500分の1以下に抑えられ、 1μV(P-P)以下になっています。実際に作っても、工作精度からこんな結果は得られないでしょうし、 また、1μVをきれいに観察できる測定器というのは、あるんでしょうか? (あったとしてもおそろしい価格でしょう)
 この差が抵抗2本(つまり数円)で出てしまうところに、アナログ回路の怖さがありますよね。 当然仕事でも、この抵抗入れました。
注意すべき点としては、抵抗のせいでオペアンプの電源電圧が落ちているということです。 オペアンプの消費電力にもよりますが(LT1128は結構流れます)抵抗消費分を無視していると、 フルスイングが思ったほど出ない結果となります。今回の用途では、±10Vのスイングがほしいので、 抵抗に47オームを採用しています。

 これが無料のツールで試せるなんてすごい世の中になったものです。 LTspiceには、リニアテクノロジーさんの部品がたくさん登録されていますし、 以前にも増して、リニアテクノロジーさんのオペアンプを愛用しそうです。


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